昨夜から引きずる痛みを持て余して返答に困り、帰るように促すあたし。
逢いたがる彼。
早く帰さないとと思うあたし。
不安定な彼。
なだめるあたし。
ゆっくり愛し合えないのがつらいと落ち込む彼。
仕方ない、それより大事なことが多すぎる‥と諭すあたし。
どんなふうに一緒にいればいいかわからない。
寝れた?
あまり。
大丈夫?
おまえは?
ねぇ大丈夫?
ぽつりぽつりと昨日のことを話す。
‥。
現実を直視できていない。大事なことがブレている。人のせい、周りのせいにして、当の本人に対決し損なってる。
お節介だけど、気掛かりを伝える。弱き者を力でねじ伏せる大人は間違ってると。大人としての弱さ、ずるさに寛大すぎると。
かばう彼。現実逃避。相手のためにならない。
でも‥疲れた顔を見ると言えなくなる。
土下座した彼の姿、描くだけで気持ちつぶれる。
心がかたくなってる顔をしてる。手を伸ばす。
触れた途端、泣きだす彼。涙がとめどなく頬をつたう。
もともと自分が危なかった。生まれたときから耐えて麻痺させて生きてきただけ。誰かをなんとかする以前に自分がだめなんだ。
とまらぬ涙を受けとめる。
横になってなでなでする。
疲れた。
うん。
目を閉じる彼。くまができてる。
風にあたる。手を繋いで戻る。
気遣うおまえの気持ちはわかる。でも、俺にとって唯一の息継ぎの場なんだよ。海水に首までつかって沈む中で、ゆいいつ空気を吸える時空。逢えないと、俺、壊れてしまう。
膝に乗せられる。抱き締めてキスをくれる。
みるみるうちに涙膨らみ、こぼれ落ちる。
こんな俺でごめん。なんもしてやれなくてごめん。巻き込んで、心労かけてごめん。
ちがうよ。あたしの問題。色々思って眠れなくて、最後は自滅に近くて、でも自分のこと頑張るしかないって思い直して、目を閉じたよ。
自分の問題?
ぽつりぽつり思ったことを話す。生きるしんどさ。消えたい気持ち。
心底望むものはいつも遠くて叶わない。
涙になる。
*‥きみに会えてほんとうによかった。うれしくて、うれしくて、言葉にできない‥*。
三人つれて出ようかと思うときあるんだ。
あたしもあるよ。でも、あなたは無理だよ。
なんで?
今から逃げたいだけだから。逃げたあと戻りたくなる。帰りなよってあたしに言わせる。あたしは違うんだ。次元がね。
思いは残る。思いは誰にも邪魔されない。最後に残るのは思い。そうだよな。離れてもどこにいても。
切なくなる。当たり前のことに今更つらくなる。
わかっててもつらいことは山のようにある。そのなかでも彼のことが一番つらい。
絶対的な味方でいるから。傍にいるから。ひとりにはしないから。
背中をさすると両手で頭かかえて涙する。
あたしの全部で抱き締める。大丈夫だよ、大丈夫。首を振る彼を抱き締めながら呪文のようにくりかえす。
必ず一緒に暮そう。約束をしよう。
指切り。
彼の小指がかたく結ばれる。気持ちの強さ、伝えてくれてる。
ひとりじゃないよ、ふたりぼっち。あたしはあなたといるから。あなただけをみてるから。
彼を大事に守れる立場にいたら、彼をこんなふうにはしなかった。あたしなら、彼のこと、もっと必死で考えてた。
彼と生きていたい。大事なものをつれて。
それが本心。
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